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Project Story

「電気を安全に届けたい」という想いを形にする、
技術者たちの開発秘話をご紹介します。

プレトラックコンセント 開発ストーリー

プレトラックコンセントは、ホコリが原因で発生する火災を防ぐ機能を持ったコンセントです。ホコリが湿気を帯びると、差し込まれたプラグの刃の間に微小な電流が流れます。これはトラッキング現象と呼ばれており、放っておくと出火する恐れがあるのです。私たちはこのトラッキング現象を検知する技術の開発に成功し、火災を防ぐプレトラックコンセントを世に送り出しました。その開発ストーリーをご紹介します。

  • プレトラックコンセント開発者 研究開発部 部長 水野 浩司(みずの こうじ)
  • チームメンバー 研究開発部 鈴木 智晴(すずき ともはる)
  • チームメンバー 研究開発部 加藤 明義(かとう あきよし)
プレトラックコンセント開発メンバー

(1)「電気を安全に届けたい」という想い

河村電器産業は1919年の創業以来、配電機器をとおして日本中の皆さまへ電気を安全に届けてきました。そのような「電気の安全」を使命としている当社ですが、今から10年以上前、電気の業界内で「トラッキング現象」のことが話題になりました。電気が原因で火災が発生しているという事実を知り、私たちの技術でその火災を防ぐことはできないかと考えました。

まずは、トラッキング現象のメカニズムを解析するところから着手しました。本当にホコリや湿気が原因で発火に至るのであれば、そこではどのような現象が起きているのか、実験を重ねて検証しました。研究を重ねていくうちに、トラッキング現象の初期状態において、電荷を含んだガスが発生することがわかりました。

そこで私は大学などの研究機関の協力を仰ぎ、トラッキング現象を検知するアイデアを考案し、それを社内のアイデアコンクール『iフェスタ』で提案しました。すると、当時の研究開発部長であり現在は取締役社長の水野の目に留まり、そのアイデアを製品化するための専門チームを立ち上げてもらうことになったのです。

(2)製品化に向けた挑戦

当初はブレーカで電気の遮断ができるような仕組みを考えていましたが、メカニズムの解析をしていくうちに、コンセントで電気の遮断をおこなうべきだという結論になりました。河村電器産業はコンセントの開発に関するノウハウは乏しく、製品化にあたってはゼロからのスタートでした。

トラッキング現象を検知するセンサーは、コンセントからできるだけ露出させた方が感度がよくなりますし、作るのも簡単です。しかし不要な動作を起こさないよう、センサーはコンセントの内部へ格納すべきと判断しました。そこで直径0.5mmの極小の穴をコンセントの表面に開け、その内側へセンサーを入れました。この穴も、大きければ大きいほど感度がよくなるのですが、とにかく不要な動作を発生させないことにこだわって最小のサイズを追及しました。

研究を重ね、製品としての形を作ることはできましたが、実用化に至るには「本当に実環境で動作するのか?」という検証が必要になります。再現実験では、プラグの刃の間に集めてきたホコリを積もらせ、擬似的にトラッキング現象を発生させました。その際はオシロスコープで電気の波形を観察します。実験を重ね、プレトラック(トラッキング現象の初期)の状態で無事にトラッキング現象を検知し、遮断機能を動作させることができました。

ちなみに、プラグの刃の間におよそ3Aの電流が流れると、プラグから発火するおそれがあります。住宅に設置されている一般的なブレーカは定格容量が20Aであるため、発火前に検知することはできません。その点、プレトラックコンセントの技術を使えば、わずか0.2Aという、トラッキング現象の初期の時点、つまりプレトラックの段階で検知することができます。

2004年ごろから開発に着手したプレトラックコンセントは、2006年に発売しました。

(3)ニーズが急増、ラインナップの拡充へ

発売から数年間は、思うように売れませんでした。普通のコンセントと比べてしまうと、明らかに価格が高かったからです。また、当時はトラッキング現象の認知もまだ低かったように思います。しかしながら、発売から10年ほど経ってから急激に売り上げが伸びていき、今では年間に10万台ほど出荷しています。これは、世の中の防災に対する意識が向上したことで、ハウスメーカー様がプレトラックコンセントを住宅に設置するケースが増えたことが理由だと考えています。

出荷台数が増えると、次のニーズが寄せられます。これまでは一般的な100Vのダブルコンセントしかラインナップにありませんでしたが、エアコン用の200Vや、差込み口の多いマルチメディア用コンセントの要望をいただきました。お客さまからの要望を製品化するのが私たちの使命だと思っておりますので、開発チームの若手メンバーを中心に、今もプレトラックコンセントの新しいラインナップの開発を進めています。

貴重な文化財を守るためにも使用されています

現在、プレトラックコンセントは住宅での使用に限らず、神社仏閣や博物館など、貴重な文化財を守るためにも使用されています。家に住む人の安全、さらに世界遺産や国宝の安全を守るプレトラックコンセントは、「電気の火災を防ぎたい」という開発者の想いからスタートしました。すべての製品にはそれぞれのストーリーがあります。そこには河村電器産業のメーカーとしての使命が表れているのかもしれません。